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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2619号 判決

被告人

山中正博

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人斎藤彌作の控訴趣意第一点について。

記録を調査すると、原審において、被告人が弁護人天野頼義及び同佐々木秀雄の両名と連署の上昭和二十四年六月十日附を以て弁護人の選任届を提出していること及びその後被告人単独の又は全弁護人の合意による主任弁護人の指定がなされなかつたことは所論のとおりであり、若し被告人又は全弁護人より主任弁護人の指定がなかつたときは裁判長においてこれを指定しなければならないことも刑事訴訟法第三十三条、刑事訴訟規則第十九条―第二十一条により明白である。しかし右各法規には、被告人若しくは全弁護人又は裁判長において主任弁護人を指定すべき時期についての定がないから、被告人又は全弁護人において弁護人選任の届出の際主任弁護人を指定しないからと云つて直ちに裁判長においてこれを指定しなければならないものではなく、訴訟手続の進行過程において、主任弁護人の指定を必要とする時期になお、被告人又は全弁護人よりその指定がなかつたとき、裁判長がこれを指定すべきものと解するを相当とする。故に本件において弁護人選任の届出があつた後、原審裁判官において主任弁護人の指定をしなかつたことを以て直ちに違法の措置ということはできないし、又第一回公判期日においては、弁護人佐々木秀雄は出頭せず且つ論旨指摘のとおり、被告人より弁護人佐々木秀雄の弁論を抛棄する旨の申出がありその儘弁論を終結したのであるから、その公判期日及びその後において主任弁護人の指定をしなかつたのは相当であり、この点に関する原審の訴訟手続には何等瑕疵はないものというべきである。

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